『Hhai - Live 75』




Christian Vander - batterie
Klaus Blasquiz - chant
Stella Vander - chant
Bernard Paganotti - basse
Gabriel Federow - guitare
Dider Lockwood - violon
Benoit Widemann - claviers
Jean-Pol Asseline - claviers


 75年の、非常に有名なライヴで、一般に初心者が最初に取るべき一枚と言われています。私もこの『Hhai』が初めてのMAGMAだったのですが、これを聴いて確かにこの演奏は一時期のクリムゾンと比べても頭一つか二つ位飛び抜けていると思ったものの、それ以上の感銘を受けはしませんでした。同時に入手した『Udu Wudu』も私が現在彼らに抱いているイメージを形作らせるに至りませんでした。因みに私が彼らの本性を知って深入りするきっかけになった作品は『BBC 1974』の「Theusz Hamtaahk」です。
 『Hhai』で初めて彼らの音楽に触れようと考えている方、またはこれだけを聴いてそこで止まってしまっている方。MAGMAの実力はこんなもの(と言ってしまいますが)ではありません。何故これが最初の一枚に推されているかというと、単純に解り易いからであろうと思われます。

Köhntark (Part One) 15:44

Köhntark (Part Two) 16:16

 これらはもともと「Köhntarkösz」と呼ばれていたものが、余りにも常軌を逸した凄まじい演奏であったため特別に「Köhntark」と名付けられたのではないかと個人的には思っています。私の耳がおかしいのか、聴き始めた当初から序盤(Part 1)が大好きなものでして、ここで既にトランス状態です。後半については言うことは有りません。聴いたことが無い方は決して想像出来ませんとしか言い様が無い。ロックで良く取り上げられる『Made in Japan』など比較の対象になりませんし*1、クリムゾンの『The Nightwatch』における「The Fright Watch」〜「The Talking Drum」〜「Larks' Tongues in Aspic Pt.2」の流れですら霞んでしまうレベルの演奏です。これを越える演奏はMAGMA内でしか見付かりません。繰り返しますがMAGMA内でなら見付かります。

 「Köhntarkösz」は確かにこのテイクが平均的に素晴らしい出来ですが、スタジオ録音版は全く異なる魅力が有って私はそちらの方が好きです。要は生ピアノ+ヴァンデの演説調の歌が入っているということです。

Ëmëhntëht-Rê (Announcement) 8:07

 荘厳な合唱のパートと、その後に電子音楽調の不吉な音風景が続く謎の曲。08年の今でこそ前半の合唱パートが採用されて『Ëmëhntëht-Rê』組曲らしきものが示されているものの、後半の不気味パートはここでしか聴けません。

Hhaï 9:20

 かなり完成度の高いテイク。ロックウッドの伴奏が大きめの音量になっており、この曲の神聖さを存分に表現出来ています。ヴァンデの歌の後の演奏も綺麗にまとまっています。

Kobah 6:37

 『Toulouse 1975』盤と同様。参照してください。この曲の真の実力は管楽器が入ってこそ示されます。

hns 4:56

 現在に至るまでスタジオ録音されていなく、ライヴでしか聴けないくせに2テイクしか存在しない曲で、これがその一つ。彼らの小曲の中でも屈指の出来栄えなのに。

Da Zeuhl Wortz Mekanïk 6:15

 「M.D.K」より。このライヴ盤に罪があるとしたら、このような不完全な形で「M.D.K」を示してしまっていることで、初心者に要らぬ誤解を与えかねないということです。大体、演奏自体全然優れていません。オリジナルのこの部分、所謂「賛美歌」では狂おしいヴァンデの祈るような悲鳴が聴けますが、このテイクでは延々と詰まらない展開を垂れ流しているだけです。スタジオ録音を聴いてください。

Mëkanïk Zaïn 18:57

 前曲に続いて、これも「M.D.K.」より。「Nebëhr Gudahtt」と「Mëkanïk Kommandöh」が一つにまとまったものです。前半の即興主体パートが「Nebëhr Gudahtt」で後半の天使の合唱(比喩ではない)が「Mëkanïk Kommandöh」です。「Nebëhr Gudahtt」はパガノッティによる7拍の高速フレーズを下地にロックウッドとヴァンデが暴れ回る、壮絶な演奏です。終盤にはロックウッドのヴァイオリンは苦悶の悲鳴を上げ這いずり回り、さらに追撃を受けて倒れます。ロックウッドは当時17歳、才能とは恐ろしいものです。なお、「Nebëhr Gudahtt」をこの形にしたのはパガノッティであり、本来はさらに地獄の様な苦痛を見せ付けられる叫びが主体ですので、ここでの演奏は確かに素晴らしいものが有りますが、私は余り本質を突いている様には思えません。2000年のライヴ版はギターのマッゴウが大好きです。

 「Mëkanïk Kommandöh」は変拍子で"Ziss Unt Etna"という呪文を延々と繰り返すコーラス素晴らしい出来です。



 
 

*1:言うまでも有りませんが、ロック、ジャズ、クラシック、その他のジャンルに関係無く"音楽的な極み"を比較しているのです。『Made in Japan』が到達した地点には拍手こそしますが、信じるには全然足りません。