『THEUSZ HAMTAAHK Trilogie - Paris 2000』



 2000年、パリにて行われた30周年記念コンサートです。本公演では結成30年にして初めてTHEUSZ HAMTAAHK全三楽章が演奏されたことが最大の目玉なのですが、寧ろこの時を以って彼等が新たなる黄金期に入ったことを証明した、非常に感慨深い式典となりました。外装の箱はMAGMAらしからぬ綺麗なもので、3枚組みで各ディスクに一楽章分が配置されており、各CDを収納するジャケットにはヴァンデ自らが用意したという各楽章のイメージ写真がプリントされています。「Theusz Hamtaahk」は燃え盛る炎、「Wurdah Ïtah」は大自然、「Mëkanïk Dëstruktïw Kömmandöh」は宇宙から見た地球(上下逆に見ると夕焼けの空)です。

 本格的にMAGMAに取り組もうとしている初心者の方には間違い無くお薦め出来ます。MAGMA入門にはこれが最適な気がします。

Zünd 1 - Theusz Hamtaahk / 究極の瞬間 (1er mouvement)  34:54

01 - Malawëlëkaahm / 呪文
02 - Sëwolahwëhn öhn Zaïn
03 - D /ëümb /ëwëlëss dölëhn / 鏡の物語
04 - Zeuhl Wortz
05 - Gorutz waahrn' / ロボットの行進
06 - Tü lü lï /ë üi dü wiï
07 - Sé lah Maahrï Donsaï
08 - Slibenli dëh Theusz / 時の波
09 - Zortsüng

Stella Vander - chant, clavier, piano Fender
Isabelle Feuillebois - chant
Antoine Paganotti - chant, piano Fender
Jean-Christophe Gamet - chant
James Mac Gaw - guitare
Emmanuel Borghi - piano Fender
Philippe Bussonnet - basse
Christian Vander - batterie

 以下同様ですが、わざわざチャプター分けされています。
 「Theusz Hamtaahk」に関しては私は『BBC 1974』のものが最強だと思っているのですが、この型に発展した今となっては別の聴き方をすることを余儀無くされています。この型の最大の欠点は「Zeuhl Wortz」途中から若干不自然な盛り上げ方をしていることだと個人的には思うのですが、それは「Kohntarkosz」の終盤で曲調が変わる瞬間とは質の違うもので私は余り馴染めません。「Gorutz waahrn'」等は弦楽隊の揃った指と腕の動きが視覚的(同内容のDVDを参照)には面白いのですが、演奏的には『BBC 1974』で聴けるこのパートに該当する部分のヤニック・トップ一人にも及んでいないと感じます。
 ですが、流石にヴァンデのドラムとコーラス隊は洗練されています。コーラス隊による終盤の恍惚と憎悪に満ちたスキャットはこの曲でしか聴けない雄大さを持っています。この型が気に入ったのなら、『神話と伝説 vol.1』のものも良いです。そちらはコーラスがブラスキスとステラの2人だけにも関わらず、私の記憶を消し飛ばすぐらいの美しさは持っています(体調が悪かっただけ)。

Zünd 2 - Wurdah Ïtah / 地球の終焉 (2e mouvement)  48:28

01 - Malawëlëkaahm (Incantation) / 呪文
02 - Bradïa da zïmehn iëgah (L'initié a parlé) / 秘伝を授し者の語り
03 - Manëh fur da Zëss (Ensemble pour le Maître) / 支配者の為のアンサンブル
04 - Fur dï Hël Kobaïa (Pour la vie éternelle) / 永遠の生命に捧ぐ
05 - Blüm tendiwa (L'âme du peuple) / 民衆の魂
06 - Wohldünt m/ëm dëwëlëss (Message dans l'étendue) / 無限からの宣託
07 - Waïnsaht !!! (En avant !!!) / 前進 !!
08 - Wlasïk steuhn Kobaïa (Ascension vers l'éternel) / 永遠へのアセンション
09 - Sëhnntëht dros wurdah süms (La mort n'est rien) / 死は虚無に非ず
10 - C'est la vie qui les a menés là ! / 命に導かれし者達
11 - Ëk sün da Zëss (Qui est le Maître) / 支配者の名は?
12 - De Zeuhl ündazïr (Vision de la musique céleste) / 聖なる音楽のヴィジョン

Stella Vander - chant, percussions
Isabelle Feuillebois - chant, percussions
Antoine Paganotti - chant
Jean-Christophe Gamet - chant
Julie Vander - chant
Claude Lamamy - chant
James Mac Gaw - piano Fender, chant
Emmanuel Borghi - piano Fender
Philippe Bussonnet - basse
Christian Vander - batterie


 ジャケットがとても綺麗です。個人的に音楽で最も愛する曲。
 「Wurdah Ïtah」はスタジオ録音、『Les Voix 1992』、これ、『神話と伝説 vol.2』の4ヴァージョンしか聴けません。『Les Voix』に至っては中途半端な収録の為、消化不良を起こしそうです。「Wurdah Glao」時代の過去の音源も聴きたい。
 演奏内容は申し分有りません。「Wurdah Ïtah」は安っぽい生ピアノで静かに、オルゴールの様に、しかし活き活きとしたリズムで、かつ狭い部屋で演奏して欲しいのですが、本録音の様に大所帯で広がりを見せてくれても良いです。ヴァンデが歌っていないのが唯一の欠点ですが、彼が歌うとドラマーがいなくなるので仕方が有りません。

 初めて聴かれる方は、この3枚のディスクの中では最難関であろうと思います。私も理解に最も時間を要したのが「Wurdah Ïtah」であったと思います。初めて聴いたときはさっぱり解からず、5回位聴いて漸く曲の構成が掴めて来た…といった調子でしたが、今では偏愛する有様です。

Zünd 3 - Mëkanïk Dëstruktïw Kömmandöh / 呪われし地球人たちへ (3e mouvement)  43:03

01 - Hortz fur dehn Stekëhn West / 呪われし人種、地球人
02 - Ïmah süri Dondaï / 永遠の黙示あらば
03 - Kobaïa iss dëh hündïn / 惑星コバイア
04 - Da Zeuhl Wortz Mëkanïk / 賛美歌
05 - Nebëhr Gudahtt / 救世主「ネベヤ・グダット」
06 - Mëkanïk Kömmandöh / 地球文明の崩壊
07 - Kreuhn Köhrmahn ïss dëh hündïn / 森羅万象の聖霊「クロイン・クォアマーン」
08 - Da Zeuhl Wortz waïnsaht (hymne de la Zeuhl Wortz)
ex - "Joyeux Anniversaire"

Stella Vander - chant, percussions
Isabelle Feuillebois - chant
Antoine Paganotti - chant, piano Fender
Jean-Christophe Gamet - chant
Julie Vander - chant
Claude Lamamy - chant
Benoît Gaudiche, Yannick Neveu - trompette
Fred Burgazzi, Ronan Simon - trombone
James Mac Gaw - guitare
Emmanuel Borghi - piano Fender
Philippe Bussonnet - basse
Christian Vander - batterie


 最後の"Joyeux Anniversaire"はヴァンデへの"ハッピー・バースデー"です。
 「M.D.K」は割と沢山の音源が若干のアレンジと共に出ていますが、スタジオ録音に匹敵する内容を持っているものにはまずお目に掛かれません。それは主にブラス隊の欠如、「Da Zeuhl Wortz Mëkanïk」や「Nebëhr Gudahtt」の表現が問題になっている訳ですが、本録音ではブラス隊も招待しましたし、2つのパートのどちらもかなり良いです。前者はステラの美声が、後者はマッゴウの演奏なのですが、問題はマッゴウです。例えば70年代ではロックウッドのヴァイオリンはヴァンデ達が弾き方に至るまで指導したそうですが、壮絶な演奏内容とは裏腹に結局ブラスキスは彼に対して余り良い評価をしていません(ヴァンデは割と好意的ですが)。私はロックウッドの演奏を"幾つか"知ることが出来るだけで、全公演を網羅している訳では無いのでブラスキスの評価の是非を判断しかねますが、前にも書きましたがロックウッドの演奏はそれ程好きでは有りません。彼の演奏は一枚ヴェールが取れていない印象を受け、一言で言えば"若い"のです。馬鹿正直とは違います。楽曲の解釈がそれ程深くないとは言えます。
 その点、マッゴウは少し心配な位です。彼の眼を見れば解かりますが、彼はMAGMA的な音楽を演奏するべく登場した狂人の眼をしています。下の動画を見れば彼が歴代最強のギタリストであることが窺い知れることでしょう。末永くMAGMAの元に居て欲しい逸材です。
 ブソネに関しては、この人は余り表に出て来るタイプじゃない気がするのですが、「Mëkanïk Kömmandöh」のベースは全ての「M.D.K」音源の中で間違い無く最高です。影で超絶的な演奏をする仕事人。この頃の風貌は少し昔のR.フリップを思わせます。

Mëkanïk Dëstruktïw Kömmandöh
これはイントロです。


Magma - Mekanik Destruktiw Kommandoh guitar solo
「Nebëhr Gudahtt」です。嬉しそう。