『Vander Top - Paris 76』





Jannick Top - basse
Christian Vander - batterie
Klaus Blasquiz - chant
Didier Lockwood - violon
Gabriel Federow - guitare
Michel Grailler - claviers



 76年11月2日、ルネッサンス劇場でのライヴより。ヤニック・トップの独壇場です。音質は全然悪くないと思います。この界隈では音質の悪さというものの定義が難しいのですが、私の基準ではクリムゾン的Earthbound効果が働いているものは全て良い音質です。逆に『Concert 1976 Opera de Reims』のようなものは最悪の音質です。本作はどちらかというとEarthbound的で、「La Musique des Spheres」のような曲が映えます。

Hhaï  8:56

 ヴァンデの歌が無いことは大きな痛手ですが、冒頭からトップのベースが小刻みに動き回り、よく歌ってくれています。安定した名曲です。

La Musique des Spheres / 天球の音楽  22:07

 本音源の最大の聴き所。不気味なミニマル・シンセ+ベースが鋭く切り込み、トップのスキャットが加わる中間部までがPart 1であり、後半のトップによるトップのためのベース・ソロがPart 2らしいです。
 Part 1はわざわざ演奏(シンセ部分はテープ流し?)するだけあってよく練られています。この手の構成はよく見られるパターンであり、Part 2の演奏を早く聴きたいからといってこの部分を飛ばしてしまうと後の快感が全然違ってきます。
 さて「La Musique des Spheres」は結構入れ込んだファンでないと手を出さないような音源にしか収録されておらず、「KMX」も同様ですが余り初心者に配慮されているとは思えません。権利の関係でゴタゴタになっているのでしょうが、この様な曲こそ早い内から聴きたいところです。彼らの長い歴史の中で超一級のベーシストを名乗れるのは紛れも無くヤニック・トップ"唯一人"であったことが実感できます。Part 2でのトップのベース・ソロには思考の流れというものがあり、私はこの部分を通してその一瞬の彼と会話するのです。「KMX」のように強烈な主張を持ったベースですが、私は「La Musique des Spheres」は「KMX」よりも幾分寂しいような、それでいてそれが恍惚であるというような響きを持っていると感じます。ヴァンデのドラムは彼の補佐、或いは煽動役といったところで、決して表に出てくるということはありません。リズムと曲の構成を支えているのがキーボード(とギター?)の反復する刹那的な鐘の響きであり、実に効果的です。

De Futura / 未来からの鼓動  25:36

 「De Futura」は地味に音源が幾つか出ていますが、スタジオ録音以外で満足出来たものは殆どありません。このテイクも期待程ではありませんでした。何しろ、肝心のトップが意外にもおとなしく、暴れてくれない。「Nancy 75」のリハーサルなどでは安心して弾けたからか、偶然の為せる技か驚異的な躍動感を示していたものですが、そこまで辿り着いていません。

Troller Tanz / 妖魔の踊り  4:20

 これもスタジオ録音と比べてもさして優れた演奏とは思えません。むしろ荒っぽくなって詰まらなくなった感じです。再現は難しそうですが……。