『Attahk』(1977)




 天と地を駆け巡る2本のベースを主軸に据えた後期の作品です。全体を通してベースの動きは面白いと思います。
 主たるヴォーカリゼーションをブラスキスに代わりヴァンデが担当しており、よりソウルフル、よりヒステリックな歌声が響き渡ります。
 メンバーの名前は全員コバイア語で記載されているため、彼らの音楽として本作を初めて手に取った方は呆気に取られることでしょう。

The Last Seven Minutes (1970-1977, phase Ⅰ)  7:33

 いきなり凶悪な主張をするベースの細々としたフレーズが印象的です。攻撃的な曲で、ヴァンデの乱高下する奇声が非常によく合っています。

Spiritual (Gospel)  3:16

 初期MAGMAの特徴は、『M.D.K』や『Kohntarkosz』等がそうであるように、どこか下地に精神的な暗黒を思わせるものが曲の中に織り込まれていたのですが、後期になると無条件に明るく、その代わりに難解なものが増えた気がします。この筋の傾向が良く出ている「Zess」などもそうですが、何でそこまでするのかと思わずにはいられないほど体力を消耗するような力強いものが出てくるのです。「Spiritual」も同様で、特に強迫的な響きを持つコーラスのリフレインは躁状態全開という感じです。

Rind/ë (Chant de l'est)  3:06

 割とまともっぽいピアノを背景に、ヴァンデのファルセットが絡みます。少し落ち着ける曲。

Liriïk Necronomicus Kanht  5:04

(Où nos deux héros Ürgon et Gorgo se rencontrent)

 誰かの鼻声スキャットと2本のベースが疾走しています。「Zess」の一部分にそっくりな歌い方は、後々まで形を変えて登場します。

Maahnt  5:29

(Epreuve de force entre certaines forces)

 色々気味の悪い前半に続いて、後半ではブラス隊も加わって軽い展開に拍車をかけます。ベースは面白いんですが……。

Dondai (A un Amour éternel)  8:00

 「Eliphas Levi」よりも少し積極的な音の点描。あちらほど好きではありません。最後の方では珍しくメロトロンと思しき音が聴こえてきます。

Nono (1978, phase Ⅱ)  6:45

 今後の動向を期待させる終わり方です。演奏自体は疾走する打楽器に反復するピアノ。そこに乗るのは奇声を発しないヴァンデの歌声と、それを補佐するコーラス。これは割りと好きです。何で唐突にフェイド・アウトして臨終発振音を流すのでしょう。