『Merci』
狂気を感じさせる攻撃的衝動がないという点で、過去のどの作品とも毛色の異なるものに仕上がった不思議な作品。その代わりに全体に悟ったような雰囲気が満ちています。曲調としては所謂「ソウル・ミュージック」なので、嫌いな人には一生縁がありません。
Call from the Dark (Ooh Ooh Baby) 7:16
思いっきり打ち込みなドラムの音に仰天します。タイトルが不安を呼びますが、ステラ大活躍の良い曲です。ステラが前面に出てくることは過去には無かったのですが、Offering時期辺りからヴァンデと並んで色々やってくれています。
Otis 5:21
ローズ・ピアノの音色に癒される、ヴァンデの独壇場。かなり分かり易い名曲。ライヴでも叫べば叫ぶほど盛り上がります。
Do The Music 4:23
余り面白くない曲。はねているようなリズムは「Otis」の方が良く出来ています。
Otis (ending) 1:58
さっきの続きです。ヴァンデがひたすらOtisのために祈りを捧げます。
I Must Return 6:38
ここから先は少し特異的な曲が並びます。まずはこの曲。悩みを振り払ったような爽快な曲調で、音作りも大作に化けそうなものです。個人的にはこれがベスト。
Eliphas Levi 11:04
これはRene Garber作詞・作曲。良い曲を書く人です。
エリファス・レヴィをwikiなどで調べるとその筋の人物らしいことが分かります。もちろん、どこかのバンドのように既に出来上がっている曲を黒だか白だかの魔術的観点から講釈垂れるというものではなく、基礎的な生活に根ざす心の持ちように対するレヴィへの敬意のようなものを表現している、と感じます。所々に入るフルートの音色や静かなパーカッション、ピアノ・ソロ(コルトレーンの「My favorite things」で聴けるもののカヴァー)が絶品です。コーラスの点描もMAGMAらしさを存分に発揮しています。
The Night We Died 4:15
「I Must Return」を受けて、こちらはより静的、耽美的なコバイア・コーラスを聴かせます。
この曲を最後にMAGMAは長い冬眠時期に入る訳ですが、伊達に「I Must Return」と宣言していた訳ではなく、ちゃんと戻ってきます。私的には70年代よりも80年代、今現在の彼らの方が好きです。