『Concert - Bobino 1981』CD / DVD


 


 81年のコンサートを収録。はっきりした記述がなくて判り難いのですが、CDとDVDとでは収録曲は同一ながら、全く別の日の公演が収められています。しかしCD版の完成度に比べて、DVDの方は音質、演奏共に全体的に劣ります。ただし「Zess」は演奏風景が05年のものと比べても実に面白く、音の乱れがあるものの絵的には大変満足出来るかと思われます。これ一曲のためにこのDVDに幾らか払う価値があると思います。
 以下のレビューはCD版に依拠しています。

Zaïn  7:38

 「M.D.K」のイントロを思わせるピアノがすぐさま不吉なシンセサイザーの大合唱に取って代わられ、メンバー全員による演説が始まります。掴みはこれ以上無い位素晴らしいものです。その後の演奏は「ぱっぱっぱぱーぱー」と陽気なもの。

Hhaï  13:10

 切れ目なしでそのままこの曲へ突入。この曲もあらゆるライヴ盤で聴けるため若干食傷気味な感じがあるものの、やはりヴァンデの歌が良いです。

Ürgon Gorgo  6:03

 ローズ・ピアノによる点描の中、2本のベースが静かめの演奏を行う、ジャズ小品といったところ。『Attahk』に入っていそうな曲です。

Retrovision (Attahk)  20:07

 最初のステラの煽りは好きなのですが、その後は2nd辺りの楽曲のレベルでしょう。このノリで大作は少し無理矢理感が否めません。

Who's My Love  7:18

 不安を誘うタイトルです。
 「Otis」の変種のような曲です。若干暗黒系を思わせる要素もありますが、歌詞はタイトルの通りだったりして困ってしまいます。

Otis  13:14

 長いというのはラストへ向けて突っ走るパートに届くまでのヴァンデの奇声が延々と続く訳で、好きな人には堪らないものです。この曲は絶叫ありきです。

Zëss (extrait, CD)  31:33

 最近のものとは曲の構成がほんの少し異なります。詩の朗読に続くコバイア語の詠唱まではヴァンデも若いだけあって、直線的な元気があります。しかしその後のギター氏の演奏は現代のマッゴウによるものよりも流暢でなく、ここまでに育った気勢を削いでしまっています。これがこの時代の「Zëss」の主な欠点でしょうか。

Zëss (extrait, DVD)

 映像で観るこの曲。冒頭の合唱は逆光になっている真っ黒なステラが両手と体を揺らして全体のリズムを指揮しています。恐ろしいです。詩の朗読では、ヴァンデ登場と思いきや、暗闇からスフィンクスを思わせるオブジェクトが出現。頭部には2本の触覚が付いています。前後に小さく揺れながら、ヴァンデの声だけがこだまします。なるほど、この似非スフィンクスが演説していると言いたい訳ですね。嫌味ではなく、本当に素晴らしいと思います。こんなことを本気でやってくれる人が存在するというだけで生きる希望が湧いてきます。
 一通り朗読が終わると、背中に天使の羽を生やし、金属的な光沢を放つ鋭い爪を装備したヴァンデが登場。ああ、この人本気ですよ。ここから先、かなり残念なテープ・ノイズが入っていますが、スピーディーな演奏を楽しめます。
 このテイクも、ドラム氏、ギター氏共に現代版の方々よりもかなり劣ると思います(音質がそう聴かせているのかも知れませんが)。しかしヴァンデは絶叫はしなくても映像ではトランスしまくっていることが分かります。ギター氏に爪を向けて今にも襲い掛かりそう。しかも白目です。
 Youtubeでも、以下の様に音声に適当に画面をくっ付けたもの(内容は音、絵共にDVDのもの)が観られますが、こんなところは問題ではありません。「Zëss」の動画をupするなら、詩の朗読の部分が最上の選択です。その部分こそ、人の想像力を刺激するものがたっぷりと仕組まれていて、それは私達にとって必要なものである筈だと思うのですが。

Magma - Zess

詩の朗読終了後。コバイア語で熱唱中。

You  15:46

 肩の力が抜けていそうな陽気な曲。「Zëss」の後に聴かされても、もう集中できません。
 2/3が本編で、残りはMCです。