『Best On Tour 76』



 表題の通り、76年ライヴの良いとこ取りということらしいです。しかしベストと銘打たれてはいるものの、私としては「La Musique des Spheres」以外は大したことはない気がします。

Mekanïk Zaïn (Paris 5 nov 76)  4:33

これは『Hhai Live 75』の同名曲とは全く関係がなく、74年頃までの「Theusz Hamtaahk」で聴かれた妙なコーダを、本編のアレンジも加えて何回か繰り返して演奏しているもの。

De Futura (Toulon 10 nov 76)  24:18

(人前での)ライヴで本領を発揮したことがあるのか分からない不遇の名曲。この音源でベストだというのなら、やはりうまくいってなかったということでしょう。

Tröller Tanz (Paris 1 nov 76)  4:19

演奏してくれるのは有難いのですが、スタジオ録音ものに比べていまいちです。

La Musique des Sphères (Antibes 19 oct 76)  21:02

ベストというより、"確かに極大を表している"といった方が良いのでは?
凶暴さという点では、この曲のライヴ音源(3つしかない)の中でも群を抜いています。この音源が聴けるということだけでこのCDは値段以上の価値があります。
スキャットが入ってくるパートでツボに嵌ったのか、かなり長めの演奏。その後いよいよソロ・パートになると、聴いているこちらが"生きていてごめんなさい"と言いたくなるような即興演奏を見せ付けてくれます。
雷鳴と共に始まり、コーダでは、最後の盛り上がりの最中に演奏がフェイド・アウトして冒頭のシンセサイザーが再び流され、雷鳴と共に消え去るという普通なら文句を言いたくなる編集ですが、トップの演奏が暴走気味であったため、何となく納得してしまいます。あの状態で、果たして纏められたのだろうか、と。
この曲は、不思議なことにこれ程強烈に演奏されているにも関わらず、やはり私にとっては無色透明な感じでどこまでも純粋無垢な印象を受けます。"天球の音楽"の名に恥じない、素晴らしい楽曲と演奏です。