『Concert 1976 - Opera de Reims』



Klaus Blasquiz - chant, percussions
Stella Vander - chant
Didier Lockwood - violon
Gabriel Federow - guitare
Patrick Gauthier - claviers
Benoît Widemann - claviers
Bernard Paganotti - basse
Christian Vander - batterie, chant


 まず始めに書いておくと、この音源は録音バランスが悪いです。『Concert 1975 Toulouse』は全く気になりませんが、本作品は声と他の楽器のバランスが悪く、ヘッドフォンで聴くには機嫌が良い時でなければ無理です。楽器だけの演奏なら幾分まともなのですが、何とも信じ難い事に、露骨な演奏ミスが散見されます。

 内容はと言えば、1976年3月2日の演奏であり、大作のみがずらりと並ぶ、CD3枚組みのヴォリュームです。しかし5曲しか入っていないのに3枚組みというのも珍しい。

Zünd 1

De Futura  24:32

 臨終気味な発振音から始まります。漸くイントロかと思ったら突然大音量。直ぐにまともな音量になるのですが、心臓に悪い。ブラスキスの声も録音バランスが悪く、変な印象を受けます。
 加速後はヴァンデのバスドラムが恐ろしく格好良いのが救いですが、パガノッティが暴走し過ぎてミスをするので安心して聴けません。

Sons Et Chorus De Batterie  26:38

 集団即興+ヴァンデのドラム・ソロ。どうやらこのドラム・ソロはきちんとした楽曲の一部らしいです。最後の方では何事かを喚き散らしながらドコバコ叩きまくっております。このドラム・ソロのみをかき集めた『Korusz』という恐るべきアルバムも有ります。

Zünd 2

Köhntarkösz  33:31

 ハマタイ!までの沈黙が怖いイントロ。本テイクではパート1の中間部が面白いです。まず、"シー、シー"という声と"チッチッ"という舌打ちらしき音の両方が使われている。スタジオ録音では前者のみ、『Toulouse 1975』では舌打ちだけです。何故こんなことに拘っているのか不思議に思われる方には良く聴かれることをお勧めします。また、このパート1はかなりスピード感のある演奏で、これが苦手な方でも取っ付き易いのでは無いでしょうか。録音バランスの悪いブラスキスとステラの声が却って魔術的な響きを持ち、幻惑されます。
 パート2におけるソロはキーボードが担当しています。このテイクは寧ろ『BBC 1974』テイク辺りを髣髴させ、まだ「K.A.」への執念を捨てきっていなかったのかと驚愕させられます。『Hhaï』で一つの頂点を見た「Köhntarkösz」ですが、彼らはまだまだ進化の可能性を模索していたのでしょうか。
 なお、ラストは"ハレルヤ"では無く『Hhaï』と同様です。

Theusz Hamtaahk  33:34

 このディスク2に収められた2曲に関しては、怪我の功名で録音バランスの悪さがある意味生かされている気がします。「Theusz Hamtaahk」においても、耳元で囁いているかの様なステラの美声が際立っています。或いは奇妙なエフェクト音がスペーシーな雰囲気を醸し出しています。瞑想的ですが、余り強烈では有りません。ギター氏も肝心なところでミスしないで欲しい。
 この曲は『BBC 1974』のテイクが素晴らし過ぎるので、他のテイクが霞んでしまいます。厳密には『BBC 1974』型とは曲の構成が若干異なりますが、本テイクの型ならば『Mythes et Legendes Vol.1』に収録されたものなども良いかと思います。


Zünd 3

Mekanïk Destruktïw Kommandöh  42:29

 謎のフェイド・インからスタート(手拍子付き)。最初の演説は控えめで、決め台詞はヘッドフォンでは左から"めかにっく!"、中央から"ですとらくてぃぶ!"、右から"こまんどー!"が聴こえてきます。
 演奏自体はベースの音質がそこそこ良く、低音が気持ち良いです。不思議なもので、声と楽器のバランスもそれ程気になりません。
 本テイクの最大の目玉は、何と言ってもパガノッティのソロ。42分29秒の中で「Nebëhr Gudahtt」に入る前のベース・ソロが12分にも及びます。最後の方では"ジュワジュワ"と蒸発して消滅し、漸くキーボードのフレーズが入ってくる始末です。お陰でその後の「Nebëhr Gudahtt」がオマケの様に聴こえてしまいますし、「Mekanïk Kommandöh」には到達すらせずに惜しくもフェイド・アウト。


聴き応えの有り過ぎる作品ですが、マグマ初心者には決してお薦め出来ません。