『Mythes & Legendes - 神話と伝説 Vol.2』



 2005年の35周年企画第2弾。大曲が目白押しな上に、『M.D.K.』以下ではヤニック・トップが演奏に加わりました。この企画は当然ながら企画的性質以上のものが望めないので、何かを期待しても意味が無いと知りつつもやはり気にはなります。Vander Topの復活です。

Wurdah Ïtah  48:58

 相変わらず素晴らしい曲です。2000年のテイクからさらに磨き上げられている印象を持ちます。特にパガノッティ兄妹の活躍が素晴らしい。前半のハイライトとなる「Blüm Tendiwa」では男声の様な低音を聴かせるヒミコと、忘我の境地に達したかに思われるアントワーヌの真摯な歌唱が凄まじい。このパートの後半の合唱でも、兄貴は独り暴走しています。大丈夫かなと思いつつもっともっと、と応援したくなります。
 つくづく彼等の脱退が悲しい。

Mëkanïk Destrutïw Kommandöh  42:52

 トップが参戦。イントロではオリジナルの念仏が復活、パガノッティ兄妹が唱えます。
 そのトップなのですが、普通です。すごく無難にまとめた感があります。「Nebëhr Gudahtt」での冒頭のソロには彼の意地らしき物を見させて頂きました(ヴァンデの眼光の何と鋭いこと)が、何故か直後にベルナール・パガノッティ流にシフト。それも途中で色々変化があって面白いと言えば面白いのですが、トップがそんな人真似しなくても良い気がするのですが。
 この後の「Mëkanïk Kömmandöh」はなかなか良いと思います。トップのベースはブソネ程切れ味が有る訳では無いものの、その代わりに音が立体的になっています。

Suite pour Violoncelle No.3 BWV 1009  2:19

 バッハの「無伴奏チェロ組曲1番 ト長調 プレリュード」より*1
 彼の嗜好が良く出ています。どうせならチェロで演奏して欲しいところですが、ベースでさらりと弾いてしまいます。こういうのを聴いてしまうと、嬉しいやら哀しいやら複雑な感情が湧き起こってきます。

Jannick Top - Suite pour violoncelle

Quadrivium  3:55

 こちらはトップの作品で、ベースのソロ。解説を読むと「"この演奏は既に音楽ですらない"とあるミュージシャンに評された」とあります。一体誰なのでしょうか。
 内容自体は悪くはありませんが、殊更に誉めたくなるものでもありません。
 曲はそのまま次の曲の導入と化すのですが、手拍子する客のリズムが合わな過ぎて笑えます。

De Futura  21:08

 この曲を聴いていると分かるのですが、トップの腕は落ちていません。ただそれは楽譜に沿って弾いたらという技術面での話であり、昔の「KMX」の様な表現が出来るのかというと判断が付きません。しかしながらこの曲については、長い年月を経た今でも加速後のヴァンデとトップの戦いには目を見張るものがあります。にやにや笑いを連発するトップ、白目で叩きまくるヴァンデの暴走には他のメンバーも着いて行くのが大変そうです。
 一般的に聴かれる終わり方では無く、多少拍子抜けします。
 

*1:3番て書いてあるのに1番とは何だろうと打ちながら思うのです。クレジットには確かに3番とありますが、曲はライナーにあるように1番のような気がします。どうなってるんだろう。