『Blackdance』- Klaus Schulze


 74年作です。そんなに有名ではないのでしょうか。割と単純で格好良い音楽なので
初心者向けな気がします。虚ろで灰色な心象風景を手軽に楽しみたい方にお薦めです。

Way Of Changes  17:04

オルガンと12弦アコースティック・ギターアルペジオが孤独な序盤の展開。わずかな前兆を見せて、やや唐突に高速のリズムと共に……タムタムでしょうか、そのようなパーカッションが展開され、その上にシュルツェのソロが乗ります。
オルガンの低音が効果的に働いていると思います。このような低音の使い方は『Kontinuum』の「Sequenzer」に通じるものがあります。

 ですが、多少安易です。つまり外見は退廃的なのですが、『Timewind』のように言葉にならない本音が随所に鏤められているようなことはほぼ無いのではないかと思います。一歩間違えるとドリーム・シアターの音楽になってしまいますが、そこまで酷くはありません。普通に何度も聴けます。寧ろかなり格好良いのですが、中途半端さが目立つということです。この曲を聴いて、何か満足感が得られるかというと、私の場合はそのようなことは無いのです。


Some Velvet Phasing  8:19

前の曲の緩和剤のようなもの。特に意味は無さそうです。

Voices Of Syn  22:27

男声テノールのアカペラがとても珍しい一品。
初めて聴いた時は後半の展開で眠りました。ひたすら単調なのは良いとして、リズムがまた催眠効果を持っています。私はまだこの曲をどう聴けば良いのか分かっていません。
 

MAGMA来日20090528@渋谷O-East

  学生レベルのライヴなら何度か足を運んだことはあるものの、プロの"表現者"が行う舞台に出向いたのは生まれて初めてでした。
 海外旅行の原理と同じで、行ったからにはその内容は素晴らしいものでなければならないという自己暗示の分を差し引いても、今回ライヴに行って良かったと思いました。

Wöhst Klahmeuhn

どう考えても発展途上の曲です。重低音のアンサンブルの中、Herve Akninの唸り声がこだまする怖い曲。Herveはアントワーヌとはまた全く異なる声質を持っていて、外見通りパワフルなものです。また、次の曲を聴いて分かる通り、低い声が素晴らしい響きを持っています。男声に関しては彼一人で今後も十分であるかと思います。

Félicité Thösz

今回ライヴに行って、私はこの曲に心底魅せられました。Bruno Ruderのピアノソロ、良かったですよ。声はStellaが主役のような感じでしたが、物凄く凛々しい御姿でした。彼らの活躍に私は思わず拍手をしたくなったものですが、周りのお客さんがおとなしかったので出来ませんでした。全体を通して、みなさんあまり乗ってないなと感じました。ラスト5分位で雰囲気が変わりChristianが歌いだすところから、私はじっとしていなければならないのが非常に辛かったです。心の中は完全にトリップ状態でした。

この曲は今後主力になりそうな感じです。今思い返すと、MAGMAも随分遠くへ行ってしまった……と感じたもので、次の曲と合わせて私ももっと彼らのことを知ろうと思ったものです。

Ëmëhntëht-Rê

2005年のDVDからまた20分程追加されて、50分強に進化したもの。正直私はこの曲は何だか突き放された感じがするので、余り好きじゃなかったのですが、特に今回感じたのは、追加されたパートが迷宮をあてどなく彷徨しているような感じで、ひたすら暗く、重く(あの低音って、ベースから出せるんですか?)、遅く、荘厳で混沌としていて、私はMAGMA、もといChristianが何を考えているのか、何を表現しようとしているのか分からなくて、悲しくなりました。「Hhai」の部分を含む前半はともかく曲全体の後半は私はまだ立ち入れません。彼らが遠いです。

Kobaïa

40周年記念、ということで演奏されました。かなり気合が入った演奏で、あまり目立ってなかったMac Gawの活躍も見られました。

ここでアンコールを求めて手拍子になり、私ももっと聴きたかったので一生懸命手を叩いた訳ですが、どうも音が小さい。それこそ手の骨が砕けるんじゃないかという位叩きましたが、何でだろう。その上周りの人も立ち上がっていて背伸びしないとステージが見えませんでした。

Ballade Nocturne

戻ってきたChristianが歌ってくれました。「マイクスタンドを傾けて裏声で絶叫」も聴けました。指の動きまで左視力1.5右視力1.0の平均的な私の眼に焼き付けました。


流石にここまで、という雰囲気が出ていたので、周りの人も潔く帰ってました。
私も複雑な思いを抱えつつ、「Félicité Thösz」を思い出しながらそそくさと帰りました。


以上
 

『Persepolis + Remixes』- Iannis Xenakis



 大体、普通の音楽なら何度も繰り返し聴くことで次第に良さが分かってくるものです。その内登場してもらおうと思っていますが、シュルツェの『Timewind』などは、私は最近になって漸く彼の気持ちと重なる感覚を得ることが出来た気がしてきたものです。

 そのような音楽が多い中で、時に聴いた瞬間に名盤・名曲であること確信する事態に陥ることが確かにあります。私の場合は、『Earthbound』が最古の一品です。そしてクセナキスの「Persepolis」が直近の一曲になっています。

 ああ、私は確かにこの曲のこの感覚とどこかで触れ合った覚えがあります。「THRAK」アウトロ、「An Index Of Metals」、「Scorched Earth」アウトロ……そうでした。金属を引き裂くような悲鳴、私はそれに惹かれて、何故多くの曲はもっとも大事な部分をそんなに短い時間で済ませてしまうのかと不思議に思っていたのでした。そうです。この「Persepolis」で聴けるのは人間の悲鳴や絶叫に似た、根源的な力です。ただのノイズではありません。もっと、腹の底から搾り出されている人間的な音です。

 他に私が思い付く相似形としては、「Facelift」の冒頭部のグギグギいっている部分にも少しだけ通じるものがあるかと思います。または、『Dark Side of The Moog II』の、カエルの鳴き声の持つ力。

 そのような訳でして、大爆音で良く聴いています。倒れそうになります。大きな力に包み込まれて、頭が爆発しそうになります。喉から空気が漏れる音がします。

 最近得た情報によると、音楽に余り興味が無い人は酒やスポーツでストレスを発散されるそうです。それでどちらも好きでないと私が答えるとしばしばどのようにストレス発散しているのか聞いてくるのですが、そこで「音楽です」なんて答えると白けます。信じてもらえないので、お薦めしません。


こんな感じです。良く聴いて下さい。一応ストーリーがあります。この曲は一時間もありますが面倒なので全部は貼りません。

Xenakis- Persepolis [GRM Mix] (1/6)