Wurdah Itah 原初の姿


 非常に個人的な好みの話ですが、私がMAGMAの楽曲の中で最も愛しているのはTheusz Hamtaahk第二楽章の『Wurdah Ïtah』です。いずれ偏愛精神に満ちたレビューを書いてMAGMAファン(が居たとして)の方々の好奇心を満足させようと思います。

 『Wurdah Ïtah』はd'Yvan Lagrange監督の映画『Tristan et Yseult』のサウンド・トラックとして製作を開始されました。Christian Vander名義ですが、演奏はMAGMAによるものです。

 ところがこのLagrangeなる監督は何を勘違いしたのか、製作途中のこの楽曲の録音を勝手に持ち出して、映画に使ってしまったのです。現在手に入るスタジオ録音盤はそういう訳で、再度録音し直されたものです。従って真のオリジナルは別に存在したのですが…近年の技術革新の恩恵により遂にその原初の姿の一部を我々の前に曝け出したのです。

 berthy75氏に感謝します。

magma "tristan & yseult" the movie !



 映像の方は如何でも良いのですが、『Wurdah Ïtah』を愛するものとしてこの演奏は到底見過ごせません。録り直した物よりも明らかに熱のあるVanderの声、生命感溢れる幽玄なピアノの響き。特に0:26秒辺りから挿入されている「Waïnsaht !!!」の表現は現在手に入る如何なる音源をも超越しています。阿呆臭いチャンバラを挟んで、2:57から「Bradïa Da Zïmehn Iëgah」。この部分に於ける、恐らくVanderのものであろう"語り"の熱狂振りが凄まじい。嗚呼、魂を込めた演奏の音源を愚の骨頂たる映画監督に持ち逃げされて、Vanderがどれ程落胆したかは想像するに余ります。

 続きがまだ有ります。

magma "tristan & yseult" the movie part 2


 「Ëk Sün Da Zëss」から始まっていますが、途中から第三楽章『Mekanïk Destruktïw Kommandöh』の「Da Zeuhl Wortz Mekanik」になっています。切れ目が無い様に聴こえるのですが、詳細は謎です。最後は「C'est La Vie Qui Les A Menés Là !」の後半部分。

 演奏難度の高さからか、唯でさえ音源が少ない『Wurdah Ïtah』。悲運の楽曲です。